心理的な錯覚の数々に衝撃を受ける|ファスト&スロー 下

ファスト&スローの下巻。上に続き相変わらずの難読書でした。

関連記事:ファスト&スローは難しすぎるけど興味深い本でした。

1ページあたりの文字数も異常でページ数もやたら多いのでかなり読むのに時間がかかりましたが、それに見合うだけの価値がある本だと思いました。今年一番血肉になった本で間違いない。

ファスト&スロー 下 あなたの意思はどのように決まるか?
(著:ダニエル・カーネマン 訳:村井 章子 出版:早川書房)

相変わらず賢そうな本でしょ?

中身もそれに伴って衝撃的です。

心理学者でありながらノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンによる心理学の実験によって暴かれている人間の意思決定のプロセスと起こりがちな錯覚についてこれでもかというくらい事細かに書かれています。

心が見透かされる本。

たまにアメリカならではの事例が出てきて共感できないことはあるものの、総じて素晴らしい気づきを与えてくれます。

新社会人にもマーケターにも経営者にも医者にも政治家にも役に立つ本!図書館司書にはあんまり役立たないかもね!

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人間は合理的だけど完全に合理的なわけではない

経済学において人間はかなり合理的に行動するという前提で話が進められている。

確かに人間は合理的に行動しようとすることが多いのだが、同時にどうしても認知的な錯覚を引き起こしてしまうため、完全に合理的な行動を取ることは極めて難しいというのが本書の最大のポイントだと思います。

中でもこれはすごいと思った心理的な錯覚をいくつか紹介しようと思います。

人間は期待値でギャンブルをするわけではない

よく、宝くじは期待値を考えたら損をするに決まっているから、その事実を知らないバカへの課税だと言われていますね。

しかし、これは人間がいかに認知的な錯覚を起こしやすいかという典型的な例なのです。

例えば以下の問題。

A.確実に9万円もらえるか、90%の確率で10万円をもらえる

B.確実に9万円失うか、90%の確率で10万円を失う。

どちらも期待値は同じです。

なので人間が期待値でギャンブルをするのであれば、大人数にアンケート調査を行うと試行回数を増やすほど5分5分の選択になっていきます。

しかし、実際にこのアンケートを実施すると、Aの場合は圧倒的に確実な9万円を手にしたがり、Bの場合は10%の確率で損をしない選択をするといいます。

多分僕が同じアンケートを受けてもそう答えるだろうなと思います。

つまり人間は得できる状況では確実さを求め、損をする状況では確実な損失を嫌うわけです。

人間が完全に合理的で入れない理由というのが、このような認知の錯覚があるからであって、こんな実験が山ほど載せられているのがファスト&スローなのです。

これを読むと、いかに人間が得することよりも損しないことを好み、本質よりもイメージのしやすさで理解しているのかということがわかります。

読み切るにはかなりのエネルギーを使いますが、新社会人から経営者まで幅広い人にとって読む価値の大きい本だと言っても過言ではない!はず…

なぜならこのような認知的な錯覚を自覚することによって、より良い選択をしていくことができるからです。

いい思い出は平均が大事

本書に出てくる実験でもうひとつ面白いなぁと思ったものがある。

それは、多少苦痛に思うほどの冷たさの水に手を入れる実験。

まず被験者には60秒水につけてもらった後、温かいタオルを渡す。

そして次の実験では60秒水につけた後に、水の中にお湯を入れて温度を上げ、さらに30秒つけてもらうという実験。

普通に考えれば、60秒の苦痛は同じで、30秒軽い苦痛を味わっている2つ目の実験の方がいやに決まってますよね。だって軽くなったとはいえ苦痛を追加するわけですから。

しかし、この実験をすると多くの人は2つ目の実験を望むという。

多分僕もこの状況ならそう考えてしまうとも思う。

このことから人間の記憶は過去の出来事の苦痛や快楽を、総量ではなく平均値で判断するのだという。

これはあまりに非合理的な錯覚だと思いません?こういう錯覚をなるべく減らしたいと思ってしょうがない内容でした。衝撃。

人間が錯覚から逃れるための唯一の方法

この本を読んでいると、人間が錯覚によっていかに本質とは真逆の非合理的な選択をしがちかというのがわかります。

なので、読んでいるうちにこの錯覚から逃れたい!という気持ちが湧いてきます。

そして、その方法は一つしかありません。

それは、人間はこういう状況の時に錯覚を起こすということを自覚すること。

ちなみに自覚しても錯覚が消えるわけではありません。

例えば10%の確率で失敗する手術と90%の確率で成功する手術の二つは意味は全く同じですが、90%成功する方がよく見えます。

しかし、これを知っていたところで10%の確率で失敗する手術と90%の確率で成功する手術の魅力が同じになることはありません。

同じだと自分に強く言い聞かせて、モヤモヤした気持ちのまま受け取らないといけないのです。

そして、こんな錯覚は山ほどあります。人間は見たいように見て聞きたいように聞くという言葉が結構正しいんじゃないかと思えてきます。

そして、ファスト&スローはそんな心理学の錯覚に関する実験が山ほど載っているので、すごくいいですよというお話!

途中で投げ出したくなるほど難解な本だったのでしばらく読み返したくはないですが、今年読んだ本で一番タメになったし、知的好奇心を満たしてくれるエキサイティングな本でした!

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