【書評】わたしは灰猫

わたしは灰猫 表紙小説

どうも、いっとくです。

Amazonの電子書籍の日替わりセールをチェックするようになってから積ん読が爆増しました。

というわけで今回も積んでいた1冊からこちらを読了。

わたしは灰猫 表紙
わたしは灰猫
著:青山 繁晴 出版:扶桑社

普段小説を買う時はジャケ買いするのですが、今回は表紙ではなくレビューの高さに惹かれて購入。

読んだ感想ですが、めちゃくちゃ惹き込まれる内容でした…!

懐かしいけど新しい読書体験という感じ!

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いかにも日本文学らしい小説

この小説を読んで真っ先に思ったのは日本の文学っぽいな〜という感覚。

大衆文学というより純文学に近い感じ。

特に一番感じたのは読んでいてこの感覚懐かしい!って思ったことなんですよね。

まさに高校生の時に模試とかで何度も受けたセンター試験の国語の問題で使われているような小説を読んでいるような気持ちになりました。今は共通テストって言うんでしたっけ。

まず、読み始めですが全く状況が掴めません。何ページか読んでも全く状況が頭に入ってこず、何をするために主人公がそこにいるのか全くわからないのです。

でもこの状況がわからないながらも、読み進めていくうちにどんどん小説の中の世界が広がっていくという感覚がすごく懐かしいのです。

最近は漫画とかわかりやすい小説を読んでいたので、完全にこのよくわからない状況を手探りで進めていく感覚というのを感じていなかったのですが、たしかに昔国語の授業とかで読んだ小説とかってこんな感じだったよな〜ということを思い出して、すごく懐かしい気持ちになりました。

ちなみにこの小説のあらすじはこんな感じです。

日本で生まれ、幼少期にアラスカへ移住した主人公の咲音(さいん)が、自分が生まれた土地に住んでいる母に会いに行ったところ、そこに母はもうおらず、代わりに自らを灰猫と名乗る少し不気味な老婆が住んでいた。灰猫は数年に一度森の中に突如現れるという湖の中で泳ぐために生きている…

という感じです。

いや〜、わかります。

今「つまんなそ!」って思いましたよね!

そうなんです。ストーリーははっきり言って面白いとは言えません。だって母に会いに行ったら、そこに住んでいたおばあさんと湖で泳ぐための練習するっていうなんですもの。

殺人、恋愛、冒険、小説を盛り上げるような波乱の展開は皆無です。ギリギリ冒険ではあるかも知れない。

美男も美女も天才も盛り上げ役も出てきません。村社会に生きる老人達と主人公くらいです。

そんな感じなのに読んでいてどんどん惹き込まれていくという不思議な小説です。

やはりその魅力は灰猫の不気味な雰囲気からはみ出てくる生きることにすがりつく人間らしさや哀愁にあるのかも知れません。

主人公と灰猫が出会うのは山の中を走るバスの中なのですが、その時の灰猫は不気味そのものです。もしかしたらオバケなのかもという気持ちすら湧いてきます。

それこそ最初はほとんど言葉を発しないし、動きもぎこちないのに誰の助けも借りようとしない強情な性格も見受けられます。

しかし、物語の進行を通じて明らかになっていく灰猫の過去や、もう自分の体がほとんど動かなくなってしまっていることへの絶望、数年に一度現れる湖で泳ぐことだけを目標にして生きているという謎の目標設定が、いかにも人間らしさを醸し出しているのです。悲しさと自由さを併せ持った人間という感じです。

出だしこそ買ったから読まないとという気持ちで読み進めていましたが、すぐに惹き込まれてどんどん読み進めたくなる小説でした〜。

以上、いっとくでした!

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