「つながり」と「はみだし」の人類学から見つめ直す個人|はみ出しの人類学【書評】

はみ出しの人間学 表紙教養

どうも、いっとくです。

突然ですが、自分らしさって何だと思いますか?

何も考えずに生きていると、自分は自分なので、特に何か意識しなくても自分らしさというのがあるように感じます。

しかし、会社にいる時の自分、家族といる時の自分、学校にいる時の自分、友達といる時の自分、後輩といる時の自分、上司といる時の自分、初対面の人と話している時の自分など、どんな立場で誰と関わっているかによって私達は自然にその役割を使い分けています。

その中のどれが本当の自分なのでしょうか?

…という問いを投げかけられて些細な衝撃を受けたのですが、文化人類学という観点からそんな当たり前を意識させてくれる本を読みました。

はみ出しの人間学 表紙
はみだしの人類学 ともに生きる方法
著:松村 圭一郎 出版:NHK出版

いや〜、これは面白かったですねぇ、、、!

ハイライトのメモを残しすぎて見返すのが大変です。

AmazonのKindle日替わりセールで安くなっていたので、なんとなく買ってみたのですが、今まで全く触れたことのないような分野の内容だったので、すごく刺激になりました。

言ってしまえば人類学と聞いても、何のイメージも湧いてこない状態で読んだのですが、日常に溶け込んで無意識になっている部分を意識的に掘り起こして定義を固めていくような感覚がすごく気持ちいい本でした。

テクノロジーの進歩はどんどん早くなっていると言われていますよね。

現時点で何かしらお店や行きたい場所を決める時にネットで検索し、おすすめのものを探したりします。個人的にはそれも選んでいると言うより、選ばされている感じがして少し抵抗したくなります。

もしかすると今後はそれがもっと発展して、AIやデータによって導き出された自分にとって最適な選択肢が身につけているデバイスから提示され、それを選ぶのが効果的かつ当たり前のことになっていくかもしれせん。というかもう半分くらい足を突っ込んでいる状態だと思います。

そうなった時に人間は一体どんな存在だと言えるのでしょうか?

本書は文化人類学がそんな問の答えになるのではということを主張しています。

本書は、そんな来たるべき未来をみすえて、文化人類学の「きほん」を生かす方法を探るささやかな試みです。

はみだしの人類学 位置No.132
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「つながり」と「はみだし」で見つける個人

そもそも文化人類学って何なのという話ですが、雑な例を出すと、フィールドワークとかに出かけて、その地域や民族の特徴とかを研究して、人類ってなんなのというのを解明していく学問です。

本書ではその人類学の「きほん」の部分に焦点を当てています。

そのテーマは「つながり」と「はみだし」。

「つながり」で際立つ境界線

「つながり」というのは人と人との関わりのことです。

実はこの「つながり」には、存在の輪郭を強化する働きと、逆に輪郭を溶かす働きの2つの側面があります。

存在の輪郭が強化されるというのは、親子を例にすると、親は子がいるから親になり、子は親がいるから子になります。これはお互いのつながりがそれぞれの役割を明確にして境界線を作っています。

また社会的な分断、例えば世の中はきのこの山派たけのこの里派に分断されていますが、これはお互いが存在しているからこそ、お互いが存在しうるのです。もしこの世にたけのこの里しかなかったらその派閥は存在しなくなるでしょう。ちなみに僕はきのこの山派です

先程文化人類学の例で、フィールドワークで他の民族を研究してと出しましたが、これもお互いが実は「つながる」ことによって境界線を作っているわけです。そこに違いを見出すことによって、自分の文化を知っていくこともできるのです。

逆に輪郭を溶かす働きというのは、今まで異文化だと思っていたものにつながって、そちらの視点で物事を見ることによって、今まであった自分というものが揺さぶられていくことを指します。

文化人類学ではこの溶け出していく体験をフィールドワークによって体験していきます。

自分は「はみだし」の積み重ねでできている

「つながり」によって輪郭が溶けていくことが、いわゆる「はみだし」です。

思えば、人間は子供の頃から色々なコミュニティに少しずつはみだして、そこで変容した結果として今の自分というのがあります。

今までいろんな役割を演じてきており、その役を全部脱ぎ捨てた時に本当の自分があるわけではなく、その沢山の変容が重なった結果が今の自分なのです。

そして、その個性というのは単体で存在するのではなく、関係性の中で見つかるものなのです。

たくさんの境界線を意識する

この本を読んでいて、最も心に刺さったのは、境界線の引き方です。

この本を読む前は漠然と自分という存在があると思っていましたが、自分も国籍、出身地、性別、年代、職業など様々なカテゴリーで区切ることができます。

つまり自分と他者との間には様々な境界線があって、その境界線の引き方によって関係性が変わるので、ステレオタイプな区切り方をした大きな主語で物を言うことはすごく乱暴な事なんだな〜と感じるようになりました。

本書のサブタイトルに「ともに生きる方法」とある通り、自分の殻を破って「つながり」を通して自分を形作っていくための重要なことが学べるようなそんな1冊でした。

このシリーズの本は結構面白そうなラインナップが並んでいるので、他のも読んでみようかしら。

とにかく、今回は偶然新しいジャンルの本を読んでみたのですが、中々面白い内容でスラスラ読めました!

みなさんもぜひ「はみだしの人類学」を読んで、つながりについて考えてみてください!

以上、いっとくでした!

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